秋の二重奏
(ハーモニー)



とことこ てくてく  いつの間にか
 
ここにこうして立っているなんてね
 
足下をたどると右往左往と足跡がついて
 
ずっとずうっと足跡は小さくなって
 
ここにいるの不思議な気がするね
 
よく晴れた空の下並んで丘に立っている二人
 
額の汗を涼風がぬぐって行くよ
 
向き合うとぎこちなくて

過ぎたことを思ったり 
 
言いたくない言葉を欲しいと言うから
 
視線を交わさず遠くへ向ける
 
何か語ろうとすると
 
風が耳元でささやくよ
 
「そんなことはもう良いから
 
何も言わなくて良いから
 
そのまま知らない振りをして
 
振り返ることもいらない
 
ためらうこともいらない
 
行ってちょうだい
 
誰の性でもないでしょう
 
たまにはそういうこともあるでしょう
 
胸が騒いでいた頃を
 
いつまでも抱えているなんて
 
しょうがない事よ」
 
そういえば足跡は二つ反対の方へ
 
声が届かないほど離れて
 
姿が見えないほど遠くて
 
心の騒ぎが聞こえるはず無かったし
 
たまらなく寂しい時を
 
今も忘れないでいるけど
 
気にかけるのはよしてね
 
どっちみちそれで良いのじゃないかしら
 
丘は清かに空気が揺れて
 
樹々が奏でるメロディーが優しい
 
山の大きなブナの木がさわさわ ざわざわ
 
枝を揺らすと木の葉が飛んで
 
向こうの街の公園の
 
大きな松が枝を揺すってざ〜ざ〜 ご〜ご〜
 
ほらほら松ぼっくりが落ちている
 
廻りめぐって時が移って
 
街の公園で大きな松が実をつけて
 
松ぼっくりを落としていると
 
街の子供が集まって拾って遊ぶに違いないね
 
山ではブナの大木が木の葉をとばして
 
素敵に歌を歌うでしょう
 
山を越えて谷を渡って街へ木の葉が届いたなら
 
一緒に歌を歌いましょう
 
奏でましょう「ハーモニー」
 
重ねましょう心の琴線を
 
静かに 優しく 美しく 

心のままに歌いましょう
 
夜も 朝も 昼も 
 
いつまでも いつまでも 

永久の約束を貴方へ
 
私は山のブナの木に
 
貴方は里で松の木に
 
生まれ変わる約束よ
 
風に舞うブナの葉がコンダクター
 
見つけたら胸をかき鳴らし歌いましょう
 
二人だけのハーモニーで

秋の二重奏 
 



2009年9月8日
峰響子

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